眼鏡をかけると近視が進む?眼科医がエビデンスで解説

👓 子どもの近視|保護者の方へ

「眼鏡をかけ始めてから、近視がどんどん進んだ気がする」「度数を弱くした方が、目にやさしいのでは?」──診察室でよくいただくご質問です。

先に結論

適切な度数の普通の眼鏡をかけることが、近視を進めるという根拠はありません。反対に、見え方をわざと弱く矯正する「低矯正」は、近視進行を抑える方法としては勧められていません。

目次

近視が進む主な理由は、眼鏡ではなく「目の成長」

子どもの近視の多くは、眼球の奥行きである眼軸長(がんじくちょう)が成長に伴って伸び、ピントが網膜より手前に合うことで起こります。眼鏡は、入ってくる光の向きを調整して、網膜にピントを合わせるためのものです。

つまり、眼鏡は「見え方を補う」ものであり、目を押して伸ばしたり、近視を作ったりするものではありません。小学生から中学生の時期は、眼鏡をかけていなくても近視が進みやすい時期です。そのため、眼鏡を作った後に度数が変わると、「眼鏡のせいで進んだ」と感じやすいのです。

眼鏡で網膜にピントを合わせる仕組みと近視の目の長さを示すイラスト

「弱い眼鏡なら近視が進まない」は本当?

以前は、近視の子どもに少し弱めの眼鏡をかければ進行を抑えられるのではないか、と考えられたことがありました。しかし、現在の研究結果はこの考えを支持していません。

子ども94人を2年間追跡した無作為比較試験

9〜14歳の子どもを、適切に矯正する群と、約0.75D(ディオプター)弱く矯正する群に分けて比較した研究では、弱く矯正した群の方が近視の進行と眼軸長の伸びが速い結果でした。

2年間での近視進行量(屈折度数)

マイナスの値が大きいほど、近視が進んだことを示します。棒の長さは「進行量の大きさ」を表しています。

近視進行量(2年間)
適切に矯正(47人)−0.77 D
0.75D弱く矯正(47人)−1.00 D

2年間での差は0.23Dでした(低矯正群の方が進行)。この試験では、眼軸長の伸びも低矯正群で有意に大きくなりました(p=0.04)。

研究の比較表(Chungら、2002年)
項目 適切に矯正 0.75D弱く矯正
対象 9〜14歳・47人 9〜14歳・47人
追跡期間 2年間 2年間
近視進行量 −0.77D −1.00D
眼軸長の伸び 低矯正群より少ない 有意に大きい(p=0.04)

この研究は「眼鏡をかけない場合」を調べたものではなく、適切な度数の眼鏡と意図的に弱くした眼鏡を比べたものです。普通の眼鏡をかけることが近視の原因になる、という結果ではありません。

その後の複数の無作為比較試験をまとめた国際近視研究所(IMI)の2025年レビューでも、0.50〜0.75D程度の低矯正で近視進行を抑えられる利益は示されず、むしろ進行が速くなる可能性が指摘されています。

「遠くが少しぼやける程度なら我慢させよう」「度数を弱めれば目に負担が少ないはず」と自己判断するのではなく、検査に基づいた度数で、医師・眼鏡店と相談して合わせることが大切です。

普通の眼鏡と「近視抑制眼鏡」は別のものです

ここで区別したいのは、一般的な単焦点眼鏡と、近視進行を抑える目的で設計された近視抑制眼鏡レンズです。

  • 一般的な単焦点眼鏡:今の度数で見え方を整えるための眼鏡です。普通の眼鏡をかけること自体が近視を進めるわけではありませんが、専用の近視抑制治療ではありません。
  • 近視抑制眼鏡レンズ:周辺部のピントにも配慮した特殊な設計で、近視の進行を抑える効果が研究されています。ミヨスマートなどがこれにあたります。

近視の進行が心配なときは、「今の眼鏡の度数は合っているか」と「近視抑制治療を検討するか」を分けて考えると分かりやすくなります。眼鏡・コンタクトレンズ・点眼などの治療の違いは、「子どもの近視 5つの治療を比較」でご紹介しています。

ご家庭で大切にしたいこと

  • 見え方に合った度数の眼鏡を使いましょう。見えにくさ、頭痛、眼鏡を嫌がるなどがあれば、度数や眼位を再確認します。
  • 眼鏡をかけたり外したり、度数を自己判断で弱めたりしないようにしましょう。
  • 近視の進行は視力だけでは分かりません。必要に応じて屈折度数や眼軸長を確認し、経過をみます。
  • 屋外で過ごす時間を確保し、読書・ゲーム・スマートフォンは近づけすぎず、休憩をはさむ習慣も大切です。

院長からひとこと

「眼鏡をかけたら近視が進むのでは」と心配され、眼鏡をできるだけ外して過ごさせているご家庭もあります。しかし、見えにくさを我慢させたり、自己判断で度数を弱くしたりすることは、お子さまにとってよい方法とはいえません。

大切なのは、今の見え方に合った眼鏡を使いながら、近視がどの程度進んでいるかを定期的に確認することです。お子さまの年齢、近視の進み方、学校やスポーツなどの生活に合わせて、無理のない近視管理を一緒に考えていきましょう。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 度数が強くなるのは、眼鏡が合っていないからですか?
A. 必ずしもそうではありません。成長とともに近視が自然に進行したり、検査で必要な度数が見つかったりすることがあります。急に見えにくくなった、片目だけ違和感がある場合は早めにご相談ください。
Q. 眼鏡をかけない方が近視は進みにくいですか?
A. 眼鏡をかけないことや、わざと弱く矯正することは、近視進行を抑える方法として勧められていません。遠くが見えにくい状態は、学校生活や安全面にも影響します。装用時間はお子さまの見え方や生活に合わせてご案内します。
Q. 眼鏡だけで近視は治りますか?
A. 一般的な眼鏡は見え方を整えるものです。近視を元に戻す治療ではありません。近視の進行が速い場合は、年齢や生活に合わせて近視抑制治療も検討します。

お子さまの見え方や近視の進行が気になる方へ

視力・度数・目の状態を確認し、生活に合った眼鏡や近視管理をご案内します。

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参考文献・資料
・Chung K, Mohidin N, O’Leary DJ. Undercorrection of myopia enhances rather than inhibits myopia progression. Vision Research. 2002;42:2555-2559. PubMed
・International Myopia Institute. IMI—Interventions for Controlling Myopia Onset and Progression. 2025. PMC
・International Myopia Institute. IMI White Paper: Interventions for Myopia Onset and Progression. IMI
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。眼鏡の度数・装用時間・近視抑制治療の適応は、お子さまの目の状態によって異なります。

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