白内障手術で「近視」も変わる?手術前に考えたいピントの距離

白内障手術で「近視」も変わる?手術前に考えたいピントの距離。読書・パソコン・遠くを見る生活場面のイメージ。

白内障・眼内レンズと見え方

神戸市東灘区 きしもと眼科 院長 岸本隼人

「近視が強いのですが、白内障手術で眼鏡の度数も変わりますか?」「今は眼鏡を外すと本が読めます。手術後も同じでしょうか?」

白内障手術を考えるときには、濁りを取り除くことに加え、手術後に、どの距離を眼鏡なしで見やすくしたいかも大切な相談事項です。眼内レンズの度数によって、術後の近視の程度は変わります。[1][2]

アイキャッチはAIで作成したイメージです。実際の患者さんや手術後の見え方を示すものではありません。

この記事のポイント

  • 白内障手術で、近視の度数や眼鏡の使い方が変わることがあります。
  • 単焦点レンズでは、遠くと手元のどちらを重視するかを相談します。
  • 「近視を減らすこと」と「自分の生活で使いやすいこと」は、必ずしも同じではありません。
目次

白内障手術では、ピントの合い方も変わります

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、通常は人工の「眼内レンズ」に置き換えます。眼内レンズにはさまざまな度数があり、術前の検査で目の形や長さなどを調べ、希望する見え方を踏まえて選びます。[1][3][4]

そのため、もともと近視の方が、遠くにピントを合わせる計画にすると、近視を減らせる場合があります。一方、手元を重視して、あえて近視を残す計画もあります。近視を残すことが、必ずしも「矯正不足」や「手術の失敗」というわけではありません。[2]

眼鏡を外して本を読む方は、術前に伝えてください

近視の方の中には、外出時には眼鏡を使い、読書やスマートフォンを見るときには外している方がいます。

単焦点レンズで遠くにピントを合わせると、手術後には「遠くは見やすいけれど、眼鏡を外しただけでは手元が読みにくい」という変化が起こり得ます。この場合、近くを見るための眼鏡を使うことになります。[2]

「裸眼で何をしたいか」を具体的に

「眼鏡をなくしたい」という希望を、もう一歩具体的にしてみましょう。「起きてすぐ時計を見たい」「眼鏡を外して本を読みたい」「仕事のパソコンを見やすくしたい」など、日常の場面が相談の手がかりになります。

遠く・中間・手元、どこを重視する?

以下は、主に単焦点眼内レンズで考える場合の目安です。単焦点レンズは、一つの距離を中心にピントを合わせるため、ほかの距離では眼鏡が必要になります。[1][2]

重視する距離 相談する生活場面 眼鏡の使い方の目安
遠く 外出、遠くの景色、テレビなど 読書やスマートフォンでは近用眼鏡が必要
中間 机に置いたパソコン、家事など 遠くや細かな手元の作業では眼鏡が必要になり得る
手元 読書、スマートフォン、手芸など 遠くを見るときには遠用眼鏡が必要

表は選び方を整理したもので、裸眼で見える範囲や視力を保証するものではありません。「中間」に合わせても、遠くから手元まで全部が見えるわけではありません。乱視などによっては、目標にした距離でも眼鏡が必要です。[3]

レンズの種類と、目標のピントは分けて考えます

「単焦点か多焦点か」と「術後にどの距離を重視するか」は、関連しますが別の相談事項です。単焦点レンズでも、遠くに合わせる計画と、手元に合わせる計画があります。[1][2]

多焦点レンズは複数の距離に対応する選択肢ですが、誰にでも適しているわけではなく、眼鏡が完全に不要になると約束できるものでもありません。若い頃の水晶体のような、自然なピント調節力がそのまま戻るわけではないことも理解しておきましょう。[1]

左右で異なる距離を担当させる「モノビジョン」という方法もありますが、両眼のバランスや見え方への慣れも含めて個別に検討します。眼鏡を使わずに済むことだけを優先せず、ご自身の目と生活に合う方法を相談してください。[2]

診察前に整理しておくと役立つこと

  • 今の眼鏡の使い方:いつかけて、どんな場面で外しているか。
  • 大切にしたい作業:運転、読書、仕事、趣味など、優先したいこと。
  • 実際に見ている距離:本やパソコン画面までの距離を、普段の姿勢で測っておく。
  • 眼鏡を使ってもよい場面:外出時か、読書時か、作業ごとか。
  • 過去の目の治療:LASIKなどの屈折矯正手術を受けたことがあれば必ず伝える。[3][4]

手術前には目標を決めますが、計算どおりの度数に必ずなるわけではありません。特に過去に角膜の屈折矯正手術を受けた方では、術後の度数の予測が難しくなることがあります。[4]

強い近視の方は、手術後も目の健康管理を

近視には、眼球の前後の長さが長いことなどが関係しています。白内障手術でレンズを置き換えても、長くなった眼球そのものを短くするわけではありません。[1][5]

したがって、眼鏡の近視度数が小さくなっても、強い近視に関連する網膜剥離などのリスクまでなくなるわけではありません。術後も、担当医の指示に沿って診察を受けましょう。[5]

よくある質問

Q. 近視は、できるだけゼロにした方がよいですか?

一律には言えません。遠くを裸眼で見たい方と、手元を裸眼で見たい方では、希望する目標が異なります。普段の眼鏡の使い方を含めて相談しましょう。[2]

Q. 遠くに合わせれば、眼鏡はいりませんか?

単焦点レンズで遠くを目標にした場合、通常は近くを見るための眼鏡が必要です。また、乱視や術後の度数のずれなどにより、遠く用の眼鏡も必要になることがあります。[3]

Q. 手術後も、今の眼鏡をそのまま使えますか?

度数が変われば、今の眼鏡が合わなくなる可能性があります。作り直す時期や、それまでの過ごし方は、術後の経過をみながら担当医に確認してください。

院長からのメッセージ

白内障手術を考える際には、「遠くが見えること」だけでなく、読書や仕事など、毎日の生活で何を大切にしたいかもお聞かせください。

長く近視と付き合ってきた方には、眼鏡を外すことで手元が見えるという、慣れ親しんだ使い方があるかもしれません。術後にその習慣がどう変わるのかを、手術前に一緒に確認していきましょう。

きしもと眼科 院長 岸本隼人

参考資料

  1. 日本眼科学会:白内障手術
  2. Moorfields Eye Hospital:Cataract(眼内レンズ・モノビジョン)
  3. Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust:Cataract surgery
  4. NICE:Cataracts in adults: management(NG77)、術前検査と眼内レンズ度数の計算
  5. 米国国立眼研究所(NEI):Nearsightedness (Myopia)

本記事は一般的な医療情報です。手術の適応、眼内レンズ、目標とする度数は、診察・検査に基づいて個別に判断します。海外資料は医学的説明の参考として用い、海外の保険制度や提供条件を当院のものとして示すものではありません。参考資料確認:2026年9月26日。

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