子どもの近視は「抑える」時代へ 5つの近視抑制治療を眼科専門医が比較

👓 子どもの近視が気になる保護者の方へ

子どもの近視は「抑える」時代へ 5つの近視抑制治療を眼科専門医が比較

神戸市東灘区 きしもと眼科 院長 岸本隼人

「子どもの視力がどんどん下がっていく」「眼鏡の度数が毎年強くなる」――そのようなお悩みを持つ保護者の方が増えています。

近視は、眼球の奥行きである眼軸長が伸びることで進行します。いったん伸びた眼軸長は基本的に元には戻りません。強い近視になるほど、将来の網膜剥離・緑内障・近視性黄斑症などのリスクが高まることが知られています。

現在は、眼鏡やコンタクトで「見えるようにする」だけでなく、近視の進行を抑えるための選択肢があります。ここでは、5つの近視管理法を同じ目線で比較します。

目次

🌱 なぜ子どものうちから近視の進行を抑えるの?

近視は、始まる年齢が早いほど進行する期間が長くなり、成人後に強い近視になりやすい傾向があります。国際的な近視管理のガイダンスでも、近視の発症年齢が早いことは、将来の強度近視を予測する重要な要因の一つとされています。

近視抑制治療の目的は、視力を一時的に良くすることだけではありません。成長期に眼軸長の伸びを定期的に確認し、必要以上に伸びるスピードをできるだけゆるやかにすることが大切です。

データから分かること

成人を含む観察研究をまとめた大規模な解析では、眼軸長が1mm長くなるごとに、網膜の病気がみられる確率の比が約3.85倍になる関連が報告されています。また、強い近視ほど、将来の網膜剥離・近視性黄斑症・緑内障などのリスクが高くなることが知られています。

※これは集団でみた「関連」を示す研究データであり、お子さま一人ひとりの将来を予測する数字ではありません。子どもの時点で重い目の病気が起こるという意味でもありません。

だからこそ、近視が軽いうち・進行が速くなる前から、生活習慣も含めて経過をみることに意味があります。治療を始めるかどうかは年齢、近視の度数、眼軸長の変化、生活スタイルを踏まえて一緒に考えます。

📊 近視抑制治療5つの比較

治療法 研究での目安 特徴 主な注意点
オルソケラトロジー 約40〜50%の抑制報告 夜つけて朝外す 感染予防・レンズケア
マイサイト ワンデー 眼軸長の伸びが約52%少ない結果 日中用の使い捨てレンズ 着脱・衛生管理
ミヨスマート 眼軸長の伸びが約62%少ない結果 特殊構造の眼鏡レンズ 十分な装用時間
リジュセア®ミニ 国内試験で度数進行を約4割抑制 寝る前に1日1回点眼 まぶしさなど
レッドライト治療 強い抑制効果の報告あり 低出力の赤色光を照射 長期安全性は要確認

※数値は主な臨床試験での目安です。研究ごとに対象年齢、近視の程度、比較相手、観察期間が異なるため、単純な比較はできません。効果には個人差があります。

近視管理の選択肢を表すイメージ。眼鏡、夜間用レンズ、日中用レンズ、点眼、レッドライト治療
近視管理には、眼鏡・レンズ・点眼・光を用いる方法などがあります。

🔍 それぞれの治療の特徴

① オルソケラトロジー
寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用し、日中は裸眼で過ごせることを目指す方法です。
向いているお子さま:スポーツなどで日中は裸眼で過ごしたい、軽度〜中等度の近視のお子さま。
注意点:レンズの洗浄・消毒が不十分だと角膜感染症のリスクがあります。保護者の方のサポートと定期検査が欠かせません。
② マイサイト ワンデー(MiSight 1 day)
近視進行抑制を目的に設計された、1日使い捨てのソフトコンタクトレンズです。見え方を矯正しながら、近視の進行を抑えることを目指します。
向いているお子さま:コンタクトレンズの付け外しを自分で安全にできるお子さま。
注意点:正しい使い方と定期検査が必要です。国内では2025年に承認されました。
③ ミヨスマート(近視管理用眼鏡レンズ)
特殊な構造で近視管理を行う眼鏡レンズです。眼鏡をかけながら近視の進行を抑えることを目指します。
向いているお子さま:コンタクトレンズに抵抗がある、目にレンズを入れることに不安があるお子さま。
注意点:効果を期待するには、起きている時間にできるだけ長くかけ続けることが大切です。
④ リジュセア®ミニ点眼液 0.025%
低濃度アトロピンを含む、寝る前に1日1回点眼する薬です。2024年12月に「近視の進行抑制」の効能・効果で国内承認されました。
国内試験:5〜15歳の近視のお子さま約300人による24か月試験で、近視の度数を総合して表す値の変化は本剤群−1.006D、プラセボ群−1.643Dでした。
注意点:まぶしさなどの副作用が起こることがあります。症状がある場合は、日差しの強い屋外で帽子やサングラスを使うことがあります。
⑤ レッドライト治療(RLRL)
低出力の赤色光を繰り返し照射する方法です。海外では高い抑制効果が報告されています。
研究で行われた使い方の例:専用の卓上型機器を用い、保護者の見守りのもとで1回3分・1日2回・2回の間隔を4時間以上あける方法が多くの臨床研究で採用されています。研究によっては週5日、または毎日行われています。通常の眼鏡は必要に応じて併用します。
大切な注意点:市販の赤色LED、家庭用美容機器、自己流の照射で代用してはいけません。機器ごとに光の出力・距離・対象年齢・禁忌が異なるため、必ず医師の指示と使用する専用機器の説明書に従います。見え方の異常、目の痛み、強いまぶしさなどがあれば中止して受診してください。
位置づけ:長期の安全性や中止後の経過など、今後も確認が必要な点があります。国内での承認・提供状況は変わりうるため、診察時にご確認ください。

🧒 どの治療を選べばいい?

  • 低年齢・近視が軽い:リジュセア点眼から検討することがあります。
  • 日中は裸眼で過ごしたい:オルソケラトロジーを検討します。
  • コンタクトを自分で扱える:マイサイト ワンデーを検討します。
  • 目にレンズを入れるのが苦手:ミヨスマートを検討します。
  • 近視の進行が速い:点眼とレンズ治療の併用を含め、より慎重に検討します。
💡 どの方法でも、始めて終わりではありません。目安として半年ごとに近視の度数や眼軸長を測定し、効果を確認しながら調整します。

❓ よくあるご質問

Q. 近視抑制治療は保険が使えますか?
A. 治療法や診療内容により費用の扱いが異なります。費用については、診察時に詳しくご説明します。
Q. 何歳から始められますか?
A. 年齢だけで一律に決めるものではありません。目の状態と、ご本人・ご家族が治療を安全に続けられるかを含めて判断します。近視が気になった時点でご相談ください。
Q. 治療すれば近視は治りますか?
A. 近視を元に戻す治療ではなく、進行を遅らせることを目指す治療です。
Q. 生活で気をつけることはありますか?
A. 屋外で過ごす時間を確保し、近くを見る作業は30分ごとに休憩を入れましょう。スマートフォンやゲームは、画面に近づきすぎず、明るい場所で見ることも大切です。

✉️ 院長からひとこと

きしもと眼科 院長 岸本隼人

子どもの近視は、成長とともに仕方ないものと思われがちです。しかし現在は、進行を抑えるための選択肢があります。大切なのは、お子さま一人ひとりに合った方法を選び、継続して経過を見ることです。迷われたら、まずはお気軽にご相談ください。

子どもの近視についてご相談ください

近視の度数・眼軸長・生活スタイルを確認し、治療の選択肢をご案内します。

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📚 参考文献・資料

  • European Society of Ophthalmology/International Myopia Institute. Update and guidance on management of myopia.
  • Haarman AEG, et al. The complications of myopia: a review and meta-analysis. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2020.
  • 眼軸長と網膜病変の関連を検討した系統的レビュー・メタ解析(成人を含む観察研究の集計)。
  • Chamberlain P, et al. MiSight® 1 day 3-year randomized clinical trial. Optom Vis Sci. 2019.
  • Lam CSY, et al. DIMS眼鏡レンズの2年ランダム化比較試験. Br J Ophthalmol. 2020.
  • Jiang L, et al. Effect of Repeated Low-Level Red-Light Therapy for Myopia Control in Children: A Multicenter Randomized Controlled Trial. Ophthalmology. 2022.
  • リジュセア®ミニ点眼液0.025% 電子添文・医薬品医療機器総合機構(PMDA)。

本記事は患者様への情報提供を目的としたものです。治療の適応、効果、安全性には個人差があります。診察・検査のうえ、医師の判断のもとで治療方針を決定いたします。

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